アジア

機械安全アプリケーションノート: No.001 / スプールワインダー(巻き取りロール)の荷下ろし作業中の事故

 

[アプリケーション] スプールワインダー(巻き取りロール)の荷下ろし
[危険源]  空圧式移動テーブル
[災害の種類] 挟まれ事故
[事故原因] 空気圧式クローズドセンターバルブの故障
[ソリューション] 安全シリンダ制御バルブの導入(二重化構造 & 故障検知機能付き)

 

さて、この『安全アプリケーションノート』では、実際にどこかの製造現場でおこった労働災害事故を詳しく分析し、どのような事故がだったのか? 危険源は何だったのか? また事故の原因とそのソリューションに関してまとめた資料です。同様な災害発生を防止するのに役立てば幸いです。

 

アプリケーション

約3.0m幅のシート状の素材を、カーペットのロールのようなスプールに巻き取る機械です。 巻き取りが完了し、材料が切断されると、作業者がロールの近くまで行き、端をテープで固定します。 巻き取りのスピードはゆっくりで、明らかな危険はありません。 このエリアには通常2人の作業者が、スプールの両端に1名ずついます。


スプールを降ろすには、大きなスチール製のテーブルを巻き取り機まで約1.2m移動させ、スプールをテーブル上で回転さて降ろします。 その後、テーブルは巻き取り機から離れ、通常の定位置に戻されます。その後、フォークリフトによりテーブルからスプールを取り出します。


このテーブルの移動は、作業者が手動で伸長ボタンを押し、テーブルを巻き取り機まで移動させ、その後、巻き取り機から離れるように後退ボタンを押すことで行われます。 このテーブルの移動機能は、5方弁3位置『クローズド・センターバルブ」を使用して2台のボア径4インチの空圧シリンダーを制御することで行われます。 バルブは、テーブルを巻き取り機まで伸ばすために一方向に通電され、非通電時には両側をブロックし、もう一方に通電されることでテーブルを巻き取り機まで引き込みます。 この動作は、1時間に1回以上の頻度で行われます。

 

ハザード

作業者は、機械の通常運転中、材料の新しい巻き取りの開始や、材料の品質と適切な巻き取りが行われていることを確認するための検査機能など様々な作業のために頻繁に巻取機とテーブルの間に立ちます。 テーブルが伸長したとき、巻上機とテーブルの間に作業者が立っていると、体が潰れてしまう危険性があります。 

この危険性は高く、各シリンダーは0.55 ~ 0.69 Mpaの典型的な工場圧力範囲において272kgfから499kgfの力を発生します。つまり、作業者がテーブルと巻取機の間に挟まれた場合、2つのシリンダーの力を合わせると、544~907kgfもの破砕力が発生する可能性があります。テーブルを動かす作業は通常の仕事の一部であるため、作業者は定期的に危険区域に入ることになります。

テーブルの1~1.2mの動きは3~5秒かけて行われるため、リスクを回避できる可能性はあります。 しかし、通常の業務では、作業者は、テーブルに背を向けて巻取機に向かい、耳栓をしていることが多いため、テーブルの動きが聞こえない可能性がありました。

注目すべきは、テーブルの動きを制御する作業者は、テーブルと巻取機の間の領域を完全に見渡すことができる状態にあることです。

 

 

安全装置の設置

同社は、テーブルと巻取機の間に人が立っているときに、テーブルが伸びる潜在的な危険性を認識し、テーブルの停止時間を考慮して、機械の間の床と側面に安全マットを設置しました。 これらは、伸縮ボタンからバルブへの電気信号を遮断することができる安全リレーに配線されています。

マットの上に人がいると、セーフティリレーがバルブに伸縮信号を送ることを許可しません。バルブは中央の位置に留まり、テーブルを動かすことはできません。

ボタンが押された状態で誰かがマットの上に乗ると、安全リレーがバルブからの電気信号を除去し、結果バルブがセンターポジションに移動します。こうして、テーブルの動きを止めます。

 

事故発生

テーブルを伸ばした後、巻取機を正常に降ろすことはできました。その後、作業者が引込ボタンを押してテーブルを後退させました。しかし、作業者がボタンを離すと、テーブルは格納位置にとどまることなく、巻取機テーブルに向かって伸び始めました。

根本的な原因は、5方弁3位置『クローズド・センター・バルブ』のスプリングが破損していたことです。 スプリングは、伸長ボタンが押されている時に破損したにもかかわらず、ボタンを離しても、シリンダーが伸長するために圧力を供給する位置にバルブが残っていました。 

テーブルがシリンダーストロークの終点にあったため、この故障はボタンが離されたときには検出されませんでした。

後退のために通電すると、バルブは後退位置に適切に移動しましたが、後退信号を解除すると、2つの反作用するスプリングによってセンタリングする代わりに、バルブスプールは延長信号を与えられたかのように、延長位置に移動し続けました。

この故障モードの最も悲惨な点は、引込ボタンが押されているとテーブルは後退しますが、誰かが「安全」マットの上に乗ると後退の信号が無効になり、テーブルがすぐに伸び始めてしまうことです。バルブの機能が安全でないだけでなく、バルブの不具合 によって安全装置が実際に安全でない状況を作り出してしまう可能性があったのです。
 

解決策

元の5方3ポジションバルブは、安全システム全体の元の5方弁3位置バルブは、安全システム全体の制御完全性を維持するのに十分な高カテゴリーまたは性能レベルに格付けされていないことが判明しました。 使用されている安全マットと安全リレーはカテゴリー”3”でしたが、元のバルブのカテゴリーは”1”でした。 つまり残念ながら、このバルブを含むシステムは累積カテゴリーは、“1”だったのです。 

 

安全システム制御の完全性を維持するためには、少なくともカテゴリー“3”の安全定格弁が必要です。

この回路には、オリジナルの5方弁3位置バルブのように、両側を閉じて圧力を閉じ込める方法と、シリンダーの両側を開いて排気し、シリンダーの両側から圧力と力を取り除く方法の2つの解決策がありました。  テーブルの重量とシリンダーの水平位置の関係から、シリンダーの両側から圧力を取り除くことにしました。 そうすれば、必要に応じてテーブルを手動で動かすことができるようになります。 もちろん、どのような解決策であっても、少なくともカテゴリー3の定格を持つバルブが必要です。 

この場合、2台の3方弁2位置ノーマルクローズ弁、または4ポートだけをノーマルクローズ機能として使用する2台の5方弁2位置弁を一緒に使用し、5方弁3位置オープンセンター回路を作成する必要があります。 流量要件とマニホールドの能力から、サイズ0のクロスミラー5方弁2位置弁スプリングリターンバルブが選定されました。
 

 

カテゴリ4対応 (第三者認証取得) 
安全シリンダ制御バルブ クロスミラー(CM)シリーズ サイズ0